顎関節症について
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顎関節症の症状
「顎関節症」という病名は聞いたことがある方は多いと思います。顎や筋肉の痛み、ロが開きづらい、顎を動かすとカクカク音がするなどが主な症状の顎の関節と筋肉の病気です。
顎関節症の歴史
顎関節症という病気は1934年に耳鼻科領域で発表され、歯科領域で発展し、1970年代からはCTやMRIの発達により関節内の関節円板の転位(ずれ)などに注目され、より関節に限定された診断と治療が可能になりました。以降、1990年までくらいは外科療法や、かみ合わせの治療が多く取り入れられていましたが、治療のゴールが歯列矯正や補綴による全体的な噛み合わせの再構成が不可欠とまで言われておりました。私の大学時代ではそういった教育を受けてきました。そのために顎関節症と診断された患者さま達には大きな負担を強いていたと思います。
1990年を過ぎると、顎関節症は皆様の日常生活上の多くの行為が症状の発症、増悪に関係していることがわかってきました。すなわち、ある意味では顎関節症も日常の生活習慣がその発症、進行に関与する生活習慣病 ( 以前成人病といわれていた ) の一つであるといえます。
顎関節症の治療と指導法
生活習慣病であるがゆえ、日常生活の中で顎の関節 , 筋肉に不自然なカを加えるような悪習慣(歯ぎしり・スポーツ・事務仕事・ストレス・偏った食生活)が続いたまま、病院での治療を受けているだけでは十分な症状の改善が望めない可能性があります。
痛みや口が開きにくいなどの症状を自覚したら、まずは歯科医院を受診・相談してください。診断の結果、必要であれば薬剤による治療、リハビリや生活指導(これが大事)、場合によっては顎への負担を軽くするためマウスピースを作製し装着することもあります。
しかしながら、顎関節症は「治療しなくとも長期的には改善する病気で、再発する可能性はあるが、最終的には症状が治まってしまう」すなわち「seil-limitting(自己緩解的)な疾患」であることがわかってきました。山本歯科医院でも慎重に経過観察はしますが、積極的な噛み合わせの治療や、外科的治療などは避けています。
以下に現在考えられている顎関節症に影響を与える可能性のある様々な生活習慣を列記しますので参考にしてください。
仕事・勉強中の注意
仕事・勉強中などに歯をくいしばっていることがある。
顎が安静な状態では上下の歯はかみ合っておらず、わずかにすき間があるのが自然な状態です。仕事・勉強中などによくほおづえをつく。
流産、早産、低体重児出産を防ぎます。仕事・勉強中などに長い時間同じ姿勢でコンビュータ一、ワープロなどのキーボードにむかっている。
全身の筋肉が緊張すると顎の筋肉も緊張します。時々ストレッチをして筋肉の緊張をほぐしましょう。仕事・勉強中などに常に何かを口にくわえている。
電話の時に受話器を肩と下顎の聞にはさんで話している。
姿勢が悪い、猫背である。
全身の筋肉が緊張すると顎の筋肉も緊張します。時々ストレッチをして筋肉の緊張をほぐしましょう。
運動・クラブ活動・娯楽などの注意
格闘技、ラグビーなど相手や地面などと強く接触するような運動をしている。
野球やゴルフなどで球を打つ瞬間にくいしばることがある。
スキューバダイビングで長時間前歯だけでマウスピースをくわえている。
顎の筋肉や関節に負担がかかるだけでなく、長時間海中にいて筋肉や関節が冷やされることがあります。スキー・スケートなど寒冷地で運動をすることにより筋肉や関節が冷やさることがある。
声楽、合唱、演劇あるいはカラオケで急に大きくロを開けて発声することが ある。
バイオリンなどの弦楽器、クラリネットなどの管楽器の演奏で下顎を不自然 な位置にすることがある。
パイプ喫煙の趣味がある。
食事についての注意
食事の時にいつも左右どちらかでばかり咬む癖がある。
食べ物をかむときはできるだけ両側の奥歯でかんでください。食べ物をかむときに痛みがあれば、痛みの少ない方でかんでください。一般的には症状のある方でかむ方が痛みが少ないようです。フランスパン、するめなどかみしめを要する食べ物が好きだ。
顎関節に症状があるうちはかみしめる必要がある硬い食べ物をさけ、柔らかい食事にしてください。声楽、合唱、演劇あるいはカラオケで急に大きくロを開けて発声することが ある。
いつもガムをかんでいる。
寝るときの注意
寝ているときに歯のくいしばり、歯ぎしりをしている。
うつぶせ寝や横を向いて寝ていることにより夜間いつも下顎に力がかかっている。
その他
唇をかむ、爪をかむ、鉛筆をかむ、舌でいつもどこかをさわっているなどの癖がある。
常にストレスを感じている。
その他気になることがあればおたずねください。また、顎関節に症状があるうちの歯科治療、全身麻酔での手術、出産、首の牽引治療などを受けられる場合にはご相談ください。